前作の「人生の勝算」がすごく良かったので、メモ術にはそれほど興味ないのだけど読んだ。
人生の勝算では、抽象化とストーリーで伝える力がすごい著者と感じたが、今作「メモの魔力」でそのスキルを培っているメモの方法が紹介されている。
また、ただ抽象化して知識やノウハウとして自分に蓄積させて終わりにするのではなく、それをどう転用して実生活に活かすかについて重点を置いて解説してくれている。
とにかく熱いのは前作から相変わらずで、読者に行動を強く促している。1,000の自己分析のための質問が巻末に掲載されていて、それを書き出すことで内省できるようになっている。
ノートにどう書くかを説明してくれているメモについてのノウハウももちろん参考になるのだけれど、それよりもメモする姿勢をなぜ持つべきか、メモしないことでどんなに損しているかを感じるところのほうに価値を感じた。
常にメモをする姿勢を保つことのメリットとして、
- 情報感度が上がる
- 本質的思考により多くの時間を使えるようになる
- 話を聞く相手への敬意の表れになる
- 構造化できるようになる
など、さまざまな要素が紹介されている。
どんな情報に触れるにしても、それを受けて、自分の行動に移せなければなんとなく知識が増えて終わりだ。
人生を好転させていくためには、常に受けた情報に自分なりの解釈をつけ、抽象化してから、次の行動につなげる必要がある。
すぐに行動に移せないようなものでも、自分の頭の引き出しにしまっておけば、いつか生きてくるタイミングがある。
8歳で両親がなくなったにもかかわらず、環境を理由にして腐ることなく、人生を切り開いてきた前田さんならではの説得力がある本だった。
メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)
- 作者: 前田裕二
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2018/12/24
- メディア: 単行本
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あと、共感を得るために自分をさらけ出す姿勢や、巻き込むためにTwitterで募集した1,000人もの人生の軸が掲載されているのが印象的だった。
「死ぬこと以外かすり傷」を書いた編集者の箕輪さんがまた編集しているようだ。
より売れる本にするための共通事項として、著者の内面をさらけ出すというのはあるかもしれない。上辺だけのキレイな部分だけを見せるよりも、かっこ悪い部分とか、過去の恥ずかしいところも出したほうが共感を得られる。
ただ、前田さんの場合は過去の暗いエピソードとして紹介されている部分すら、なんだか格好良いのだけれど。
こんな映画やドラマにありそうな生き方をしている人は、それをただ本にまとめるだけで面白い。そういった人材を発掘してコンテンツにしていくのが編集者の腕の見せどころなのだろう。
TwitterやFacebookなどで可視化されるようになりつつあるとはいえ、本当に忙しくして面白い生き方をしている人の大部分はまだまだいずれもやっていないだろうから。経営者とか対外発信をすることでマーケティングや採用にメリットがある人たちはまだしも、研究者やアスリートなど発信の必要がない人たちも多い。