ひさびさに熱量が高い本を読んだ。なんだか生き方を見直さざるを得ないというか、とにかく焦りが生まれた。
DeNA(ディー・エヌ・エー)の傘下でSHOWROOM(ショウルーム)という会社を立ち上げて、猛烈に働いている前田裕二さんの人生の勝算だ。
最近ライフワークバランスみたいなことを意識していたんだけど、読んでいて激しく働きたくなった。
SHOWROOMとは、投げ銭機能のあるライブストリーミングのアプリ。生放送で歌ったり踊ったり、会話したりして、ファンとなった人からおひねりを貰うという路上ライブをインターネットに落としたようなアプリだ。
アイドルやミュージシャンが生放送すると、ファンがお金を投げる。前田さん本人のTwitterアカウントでの投稿によると、なんとネットフリックスを抑えて動画アプリの中で最も売上が立っているらしい。
SHOWROOMが動画アプリの収益部門でネットフリックスをおさえ国内No. 1!次は、世界だ。https://t.co/xWPse9ZRkO pic.twitter.com/d3pwSwWY9n
— 前田 裕二 / Yuji Maeda (@UGMD) 2017年9月13日
人生をかけて成し遂げたいことを決め、そこに対して死ぬほど働いて達成しようとしている本人の姿が描かれている。
本の帯に天才と書いてあるが、こんなに努力し続けられる人はこれからも伸び続けるだろうと思う。
幼少期に両親をなくされ、小学生なのに弾き語りで月間10万円以上を路上で稼いだエピソードから、UBS証券という外資系金融機関で成功して2年目でニューヨーク勤務になり、その後過去のバンドメンバーの急死がきっかけで起業を志すようになるまでのエピソードがまとまっている。
出自によらず、自分の努力で成長していくことで、どこまでも大きなことを目指せるというのがわかる。
それだけだと、よくある起業家の成功体験をまとめた自伝だが、この本のすごいところは、自分の体験や著者が人から受けたアドバイスから、ほかの人でもわかりやすいように抽象化したりたとえ話を用いて説明したりしているところだ。
たとえば、SHOWROOMに出演している人たちの属性を、
1.ファンとの距離が近い・遠い
2.ファンの人数が多い・少ない
の4象限で、ファンが少ないが距離が近く、コミュニケーションをとれるところが今後ビジネスで規模が大きくなっていくというのは納得だった。
場末のスナックがなぜ営業を続けられているかの考察と、それがライブ動画と通信速度の改善でインターネット上でも再現されていくというのは確かにそのとおりだと思った。
UBS証券でのエピソードでは、尊敬する先輩社員の姿を徹底的に真似していた。話し方や仕草だけでなく、文房具まで真似するとか、徹底ぶりがすごい。
また、先輩社員に仕事のルールがわかっていないと言われ、株式投資のアドバイスをするだけではなく、接待や飲み会などで馬鹿をやって、人間関係を緊密にしていくというエピソードも順応性が高いことがわかる。
優秀な人なのに圧倒的な努力をしていて、しかも夢に対する情熱がものすごい。自分の生き方を省みるきっかけになる本だった。
自分がとにかく漠然と毎日を生きてしまっているなと感じる。前田さんは心の中で自分が向かうと決めた先をコンパスと表現しているが、コンパスがないままフラフラと様々な方向に行ったりきたりしているのはやばい。
何が自分の人生にとって大切なのか、どういう状態なら幸せなのかを定義できてない。
他人の芝生が青く見えるという状態を完全に脱却できていない。
自分なりの基準が何もないで右往左往している。この本読むと、自分はいい年してかなりやばいと感じた。
何を優先させて、残りの人生をどう使っていくのかを整理しようと思う。
ちなみにDeNAの南場智子会長が前田さんを5年かけて口説き落とした説明があるのだが、優秀な人をどう集め続けるかがベンチャーの成長には欠かせないことがわかる。
前田さんくらいの人材をどうにかして巻き込もうとする南場さんの姿勢は参考になる。
早稲田大学を卒業し外資系金融機関に就職した経歴を見ても優秀なことはわかるが、あくまでも1人の新卒採用の面接で来た人である前田さんに対して何年も連絡し続けるって、人材に対する向き合い方が半端ない。
零細企業ならわかるが、すでにDeNAは大企業で、しかもその創業者なのに新卒採用で獲得できなかった人材に個別にメッセージを送り続ける。これは本当にすごいことだ。
それだけ前田さんが面接で光を放っていたのかもしれないが。