「新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング」は仕事で文章を書くことの多い人やブロガーにとって必須と言っていいほどの名著です。
読み手に最後まで完読してもらうことを質の高い文章であるとして、どうすれば途中で飽きずに読み切ってもらえるのかについて丁寧に解説されています。
「新しい文章力の教室」を読んでから、過去に書いた自分の文章を見直すと、あまりにも直すところが多すぎて全部修正してられないと思うくらい、変更点が見つかります。
ネタだしから構成案までの流れ
1.書きたいことのパーツを揃える、2.文章の主眼をセットする、3.文章の骨子を立てる、4.「構造シート」で整理するという文章を書く前の一連の流れは頭に入れておくと、どんな内容にも適用できてとても書きやすくなると思います。
ぼくは仕事でもウェブサイトに掲載するためのコンテンツを日々制作しているため、最近は書き出す前に上記の4ステップを意識するようにしています。頭の中でこのプロセスが行えるようになってきて、だいぶ効率が上がりました。
ネタがなかなか見つからなくてコンテンツを制作できないという人のためにもこの本は様々な切り口を提案してくれます。
読み手への気づかい
意味だけではなく、字面や語呂まで考慮して文章を書くことで、読み手にできるだけわかりやすく感じてもらうための工夫が説明されています。
重複チェックや文末のバリエーション、読点の使い方、文章の適切な長さ、漢字とかなのバランスなど、見たり聞いたりしたときの感覚で不自然な点がないように意識するべきポイントがまとまっています。
明快かつ簡潔にして読み手の負担を減らす
冗長な表現を使っていると、読み手が負担に感じてしまい、途中で読むのをやめてしまうことが多くなります。濁し言葉や伝聞表現は使わないようにします。濁し言葉は「という」、「○○ら」などの曖昧さを残すための言葉のことです。
また、読者に理解してもらいやすい丁寧な文章にするための方法として、文章のスピード感の調整をするというのは納得でした。スピード感とは文字あたりの情報量を指していて、少ない文字数で多くの意味を伝える文章ほどスピード感のある文章です。大した情報量でないのに冗長な文章はもちろん駄目なのですが、あまりにもスピード感がありすぎても読者の負担となります。
指示語や一般的でない名詞も読者を置いてけぼりにしてしまう可能性があるので注意が必要です。
また、具体性に欠ける「ボンヤリワード」もできるだけ使わないようにします。作品、企画、物語、楽曲、番組、コンテンツ、ストーリー、ステージ、プロジェクトなどです。これらのワードを使う代わりに具体的にどういったものなのかを説明するようにします。
とにかく読者に少しでも読みやすくわかりやすい内容になるように、筆者が普段から意識していることがたくさんまとまっています。
読者をしらけさせない工夫
主観ではなく事実を具体的に伝えることがオリジナリティにつながるという説明があって、すごく腹に落ちました。セリフや会話の引用など、できるだけ臨場感を伝えやすい方法を採用して、他と違った文章を書くようにします。
「自分の感動を書くのではなくて、読者が感動を読み取れるようにする」というのも納得でした。 主観をまじえすぎてくどい印象を与えないようにします。
定期的に読み直したい
すごくわかりやすい本なので、一度読めば内容は理解できますが、実践の中ですべて徹底できるまでには膨大な時間がかかりそうです。そのため、定期的に読みなおして、自分の文章を見なおしつつ、改善していきます。
文章を書くのが好きで、それなりにインターネットで文章をたくさん書いてきました。また、本も少なくとも3,000冊は読んでいると思いますから、それなりに文章には慣れているほうだと思います。それでもこの本の中で意識したことのない注意点がたくさん書かれていて参考になりました。ライター専業として働いているわけではありませんので当たり前なのですが。
この本を読むと専門家がどう工夫して読みやすい文章を作っているのかがわかりますし、普段触れている文章の品質がどうなのか意識するきっかけになりました。
また、仕事の現場ではチームのメンバー間で文章力にばらつきがあるときに、最低の水準を引き上げる効果も期待できる本です。この本を読んで執筆すれば、意味が通らなかったり、読み手によって解釈が異なったりするレベルの悪文はなくなるでしょう。
同僚に読んでもらって、お互いの原稿を校正すると気づきが多いのではないかと思います。
新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング (できるビジネス)
- 作者: 唐木元
- 出版社/メーカー: インプレス
- 発売日: 2015/08/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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