ケンジツ

育児や読書の内容などを気ままに書くブログ。最近は仮想通貨にハマっていて、調べたことを記事にしています。

ビットコイン誕生の歴史がわかる本 「デジタル・ゴールド」

ビットコインに興味があって読んだ本、「デジタルゴールド」がすごくよかった。

ビットコインのコア開発者や関連企業を設立した起業家たちへのインタビューを元にして書かれたノンフィクション。ニューヨークタイムズの記者が書いている。

 

ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトと直接やり取りして開発や普及のための活動をしてきた人たちが多数エピソードを語っている。いまだに誰がサトシ・ナカモトなのかはわかっていないが、匿名とはいえ当時やり取りしていた人は多数いる。

 

サトシ・ナカモトが暗号についてのメーリングリストで、自分の考えたアイデアを共有するところからはじまり、最初のコアの開発者の1人であるハル・フィニーなどがどうやってそのアイデアに熱狂して手伝うようになるかが描かれている。

 

最初誰もがビットコインを信じていない状態から、少しずつ関与する人を増やしていって大きな波になっていったのか、その流れを知ることができる貴重な書籍だ。

 

デジタル・ゴールド??ビットコイン、その知られざる物語

デジタル・ゴールド??ビットコイン、その知られざる物語

 

 

社会現象になるまでの流れ

どういう政治信条や思想を持った人がビットコインのアイデアを後押ししていったのかについても詳しい。

マルッティというビットコインを広げるための活動に早い段階から関与していた人が、無政府社会の実現を謳うフォーラムに書いた以下の文章が象徴的。

こんなシステムが広く使われるようになったら、国家が自らの家畜をいいように食い物にしている現状に痛烈な一撃になるかもしれない。どう思う?僕らが生きているうちに本物の自由を実現してくれそうな現実的な手段があるなんて、考えただけでもワクワクするよ。あと必要なのは、このソフトやシステムが実用化できるだけの信頼性を持ち合わせているという説得力のある証拠だけだ。(p52)

また、公式サイトのよくある質問をまとめたページで、「ビットコインを使うべき理由はなんですか?」という箇所で、以下のように書いている。

独裁的な中央銀行の不公平な通貨政策をはじめ、通貨供給を中央集権権力に握られることから生じるさまざまなリスクから身を守ろう。ビットコイン・システムの通貨供給の拡大には制限がかかっており、しかも金融エリートに独占されることなく、(CPUの性能に応じて)ネットワーク中に均等に分配される。(p57)

 

最初はビットコイン自体は怪しくて胡散臭いものだったはずだ。

関与することで利益がでるという打算的に考えて加わった人はあまりいなくて、単純にアイデアや思想に惚れ込んでほかの人を巻き込もうとする人が多かっただろう。

2009年の1月にソフトウェアが配布され、マイニングが開始されたビットコインは最初はサトシ・ナカモトとハル・フィニーのパソコンだけで動いていた。サトシはさまざまなコミュニティやグループに投稿して宣伝しようとしたが、思うように広まっていかなった。

最初のマイニング報酬は50BTCだった。いまの資産価値で4000億円以上。

最初にビットコインを議論するフォーラムができたのは2009年秋。

はじめて商品とビットコインの売買ができるようになった取引サイト「スワップ・バラエティ・ショップ」は、少しの商品しか扱いがなくすぐに閉鎖された。

 

ビットコインが価値を持つきっかけの1つになったエピソード

ラースロー・ハネツという技術者がはじめてGPUマイニングを実施。当時はみんながCPUでマイニングをしていた。ビットコインに価値がなかったので、誰も51%のコンピューティングパワーを取ろうなどとは考えていなかった。そのためすぐに1日で1400BTCを稼げるようになった。しかもラースローはコミュニティ全体の価値を考えられる人間だった。

70,000BTC貯めたラースローはピザ1枚につき10,000BTCを提示して、実際に彼の自宅にピザを送る人が何人か出た。ラースローのおかげで現実世界でビットコインを使ってものを買えるという前例ができた。

広めるためのボランティア的活動

「ビットコイン・フォーセット」というプロジェクトがギャビン・アンドレセンというプログラマによって立ち上げられた。わざわざ配布用の10,000BTCを50ドルで購入して、それをサイトに登録した人全員に無料5BTCずつ配った。プロジェクトを成功させるために、ただボランティアで多くの人に使ってもらう機会を与えたのだ。

アルトフォルツというハンドルネームのプログラマが、システムの致命的な脆弱性を発見した。欠陥をつくと他人名義のビットコインを勝手に使えてしまうもので、プロジェクトの信頼性がゼロになる可能性があるものだった。このバグをアルトフォルツがサトシに伝えずに利用すれば、すべてのビットコインを奪うこともできてしまった。ただ、そうするとプロジェクトが崩壊し、ビットコインの価値がなくなり、すでにアルトフォルツが持っているコインの価値もゼロになってしまう。すでにGPUでのマイニングを開始していたアルトフォルツはシステムの維持のために善意で行動した。

サトシがコア開発者の1人であるギャビンに、公式サイトに自分のメールアドレスの代わりにギャビンのメールアドレスを書くように依頼。その後2010年12月12日に公開フォーラムへの最後の投稿をした。

 

関連サービスの立ち上がり

破綻したことで有名なMtgox.com(マウントゴックス)は2010年7月18日に、違法なものの売買で有名になって運営者が逮捕されたシルクロードは2011年1月に立ち上がった。

ほかにも取引所のビットインスタントとコインベースとBTCチャイナ、マイニング専用の機会であるASICの開発をするバタフライ・ラボとアバロンのような会社についても説明がある。

このあたりの関連サービスがどんな人によってどうやってはじめられたのかは、取材だけでなく当時の掲示板・ブログなどへの本人の書き込み履歴を追うことでまとめられている。何年も前の書き込みをチェックしていった著者のすごい努力の結果である。

 

後世に歴史を伝える資料としての価値がすごく高い本だ。

 

資産価値の保全で使われている

アルゼンチンなど一部の国で資産価値の保全のために人々が現金でビットコインを対面で購入している。オンラインでの取引所などなくても、売り手と買い手がスマホさえ持っていれば、ウォレットアプリをダウンロードして、現金とビットコインを交換することはできる。

自国の通貨が何度も紙くず同然の価値になった歴史をもつ国の人たちは、国が出している通貨といえども信頼していない。

そのため、近隣の別の国に銀行口座をつくってそこに地下送金して貯金したり、米ドルに換金して保管したりしている。そうした流れでビットコインも同じような用途で使われ始めている。

たとえビットコインが現地で違法であったとしてもこの流れは止まりそうにない。通貨の両替においても、すでに政府が設定している公定為替レートと、闇両替のレートで大きな差があるような状態だ。同じように仮に禁止されたとしても、それが自分の資産を守ることに繋がるのであればビットコインを買う人は増え続けるだろう。

以下の記事でも似たようなことを書いた。

www.kenjitu.net